高齢の親の防災グッズ準備|実家に本当に必要なものと置き場所

実家の防災でいちばん怖いのは、モノがないことではありません。あるのに使えないことです。
押入れの上の段に上げた防災リュックは、高齢の親には下ろせません。この記事では、離れて暮らす方に向けて、実家に本当に必要なものと、親が自分の手で届く置き場所の決め方をお伝えします。
こんな人におすすめ
- 離れて暮らす高齢の親の防災が、ずっと気になっている方
- 実家に何をそろえればいいのか、リストで知りたい方
- 買って送ったのに使われていない、という状態を防ぎたい方
- 親に「うちは大丈夫」と言われて、話が進まない方
- 9月1日の防災の日や帰省に合わせて、実家の備えを整えたい方
目次
結論:実家の備えは「量」より「届く場所」で決まる
先に結論をお伝えします。高齢の親の防災グッズは、どれだけそろえたかより、親が自分の手で出せる場所にあるかと親が自分で使えるものかで、役に立つかどうかが決まります。
実家の備えで、先に決める3つ
- 置き場所:寝室の枕元と玄関の2か所。しゃがまず、背伸びせずに届く高さに置く
- 中身:親が毎日使っているもの(薬・眼鏡・履き物)から先にそろえる
- 進め方:一度に全部やらない。帰省のたびに1つずつ足していく
立派な防災セットを送っても、押入れの上段に上げてしまえば、そこにないのと同じです。夜中に停電して、暗い部屋で椅子に乗って荷物を下ろす。それはむしろ危険な行動になってしまいます。
そして、実家の備えには「離れているぶん、確認ができない」という弱点があります。だからこそ、置き場所を親と一緒に決め、写真を撮って手元に残しておく。この一手間が、電話越しに「あの棚の下にあるよ」と言える状態を作ります。
実家に本当に必要なもの【リスト】
まず土台になる7つをそろえ、そのうえで高齢の親ならではの5つを足す。この順番で考えると、抜けが出にくくなります。
土台になる7つ
- 水:1人1日3リットルが目安。ペットボトルは2リットルより500ミリリットルのほうが親には扱いやすい
- 食べ物:やわらかく、食べ慣れたもの。レトルトのおかゆや缶詰など、そのまま食べられるもの
- 明かり:置いて使えるランタン型。手に持つ必要がなく、両手が空く
- 情報:電池式または手回しのラジオ。スマホだけに頼らない
- トイレ:簡易トイレ。断水したときにいちばん困るのがここ
- 体を守るもの:履き慣れた靴、手袋、笛
- お金と連絡先:小銭を含む現金と、紙に書いた家族の連絡先
必要な量は家族の人数と日数で変わります。実家が何人暮らしかを入れて計算すると早いです。
【関連記事】防災備蓄は何日分?家族の人数で量が一瞬でわかる無料ツール
高齢の親ならではの5つ
ここが、一般的な防災リュックとの分かれ道です。市販のセットにはまず入っていません。
- 常備薬とお薬手帳のコピー:手帳そのものを持ち出せなくても、コピーがあれば薬の内容を正確に伝えられます
- 予備の眼鏡:ふだんの眼鏡が割れると、避難先で書類も薬の説明書も読めなくなります
- 補聴器の電池・入れ歯の洗浄剤:毎日使っているものほど、なくなると困ります
- 大人用の紙パンツ・尿とりパッド:使っている場合は数日分。避難所で手に入りにくいものです
- 杖と、履き慣れた靴:新品の靴は足に合わず、かえって歩けなくなります
なお、薬の種類・量・飲み方の判断は、必ずかかりつけの医師や薬剤師に相談してください。この記事では判断の目安をお伝えできません。

期限の確認は、親と一緒にやると置き場所も一緒に伝わります。
手袋は「親の手のサイズ」で選ぶ
地震のあと、家の中はガラスや割れた食器で足の踏み場がなくなります。倒れた家具を動かすのも、割れたものを片付けるのも、使うのは手です。
WARAIGAOの防刃手袋を監修した「たすく」は、消防士として現場に出ていたころの経験をこう話しています。「消防士として現場に駆けつけた震災直後、倒壊した家屋から自力脱出を試みた方の多くが手を深く傷つけていました」。
ここで大事なのは、自力で動いた方の手が傷ついていたという点です。離れて暮らしている家族はすぐには駆けつけられませんし、消防や救急もすぐには来られません。その時間、親は自分の手で動くことになります。だからこそ、手を守るものは実家にこそ置いてほしいのです。
選ぶときは、EN388という切り傷への強さを示す規格の表示があるかを見てください。そして、それ以上に大事なのがサイズです。手の小さい方がぶかぶかの手袋をつけると、指先が余って物をつかみにくくなり、かえって危なくなります。実家に置くなら、親の手に合う小さめのサイズを選んでください。
非常袋に入れる枚数や、手袋の選び方の基準はこちらの記事で詳しく解説しています。
【関連記事】防災グローブおすすめ【2026年最新】非常袋に入れるべき枚数と選び方を消防士が解説
重さの上限は「親が持てる重さ」
そろえるほど荷物は重くなります。ここで一度立ち止まってください。目安は、親がその場で背負って家の中を一周できる重さです。背負ってもらってつらそうなら、迷わず減らします。
減らしたぶんは捨てるのではなく、自宅の棚に分けて置きます。持ち出す分は軽く、家に残る分でしっかり量を確保する。この二段構えなら、持ち出せる軽さと、家で過ごすための量の両方を確保できます。
一般的な防災リュックと変えるところ【比較表】
市販の防災セットは、若い人が自分で使う前提で作られていることがほとんどです。実家に置くときは、次の8か所を入れ替えてください。
| 項目 | 一般的な防災リュック | 高齢の親の実家では | 理由 |
|---|---|---|---|
| 重さ | 7〜10kg | 背負って家を一周できる重さまで | 重いと持ち出せず、その場に置いていくことになる |
| 置き場所 | 玄関収納・押入れ | 寝室の枕元+玄関の低い棚 | 夜に揺れたとき、手を伸ばして届く位置に要る |
| 水の容器 | 2リットルのボトル | 500ミリリットルのボトル | 重い容器はふたを開けるのも注ぐのも負担になる |
| 食べ物 | 乾パン・アルファ米 | レトルトのおかゆ・やわらかい缶詰 | 硬いものは食べられないことがある。食べ慣れた味が安心につながる |
| 明かり | 手に持つ懐中電灯 | 置いて使えるランタン+足元灯 | 片手がふさがると、杖や手すりが使えない |
| 情報 | スマホ中心 | 手回しラジオ+紙に書いた連絡先 | 充電が切れると、電話番号ごと分からなくなる |
| 手袋 | 薄い綿の軍手 | 手のサイズに合う耐切創の手袋 | 割れたガラスや金属片には綿の軍手では力不足 |
| 履き物 | 新品のスニーカー | 履き慣れた靴 | 足に合わない靴は、避難のときに歩けなくなる |

一式をたたみに広げて、親と一緒に確認します(写真に写っているのは一般的な綿の軍手です)。
表にすると多く見えますが、全部を今日そろえる必要はありません。次の帰省で1つ、その次で1つ。それで十分に進みます。
あなたの実家はどのタイプ?
同じ「実家の防災が心配」でも、最初の一手は状況で変わります。近いものを選んでみてください。
タイプA:親が一人暮らし
- 助けを呼ぶ相手が家の中にいないタイプ。連絡手段がいちばん大事になります
- 枕元に「ライト・笛・履き物」の3点があるかを最優先で確認する
- → 量をそろえるより、まず枕元の3点と近所への連絡先から
タイプB:親が二人暮らし・まだ元気
- 二人分の量が要るタイプ。一人分の感覚で買うと足りなくなります
- 片方が体調を崩したとき、もう片方が全部を運べるかも考えておく
- → 人数×日数で必要量を計算し、荷物は2つに分けて軽くする
タイプC:親が「うちは大丈夫」と話を聞かない
- 正論で説得するほど、かたくなになるタイプです
- 「心配だから」ではなく「私が安心したいから」と、理由を自分側に置く
- → 今回はライトだけ、次は水だけ。1回1つに絞って置いていく
もっと正確に診断するなら
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帰省のときにできる置き場所づくり3ステップ
実家に行ける時間は限られています。30分あればできる順番に並べました。
ステップ1:押入れを開けて、いま何があるかを見る
- 買い足す前に、まず在庫を見る。古い防災セットが眠っていることが多い
- 水と食べ物の期限、ライトが点くかどうかをその場で確認する
- 使えないものは処分し、使えるものは手前に出す
ステップ2:寝室の枕元に「夜用の3点」を置く
- ライト・履き物・笛。この3つだけは、寝ている場所から手が届くところに置く
- 夜に揺れると、部屋は真っ暗でガラスが散らばった状態になる
- スリッパではなく、底のしっかりした靴を枕元に置いておくとより安全
ステップ3:玄関の低い棚に、持ち出す一式をまとめる
- 腰から目の高さまでの棚に置く。しゃがむ・背伸びをする位置は避ける
- 置いた場所をスマホで撮って、自分の手元にも残しておく
- 電話で「玄関の下駄箱の横だよ」と言えるようになれば完成
実家に行ったついでに片付けもする方は、あって助かった道具をこちらにまとめています。
【関連記事】実家の片付けに必要なもの完全リスト|あって助かった道具を消防士が解説
親に嫌がられない言い方
「危ないから」「もう歳なんだから」という言い方は、たいてい反発を招きます。親にとっては、できないことを指摘されているように聞こえるからです。
おすすめは、理由を自分側に置くことです。「私が離れていて心配だから、これだけ置かせてほしい」。この言い方なら、親は誰かのために受け入れるという形になります。そして、決して一度に全部やらないでください。置くのは1回に1つ。次の帰省でまた1つ。半年で3つ増えれば、それは十分な前進です。

正直なデメリット
実家の備えという取り組みそのものと、おすすめしている防刃手袋の両方について、先に弱点をお伝えします。
デメリット:離れている以上、そろえても使われるとは限らない
それでも大丈夫な理由:使われるかどうかは「置き場所を親自身が知っているか」でほぼ決まります。送りっぱなしにせず、置き場所を親と一緒に決めてください。写真を撮って手元に残しておけば、電話でも場所を伝えられます。帰省のたびに一度開ける習慣がつけば、親の記憶にも残り続けます。
デメリット:一式そろえるとお金がかかる
対処法:一度に買わないことです。消耗品は100円ショップで安く固め、手を守るものと明かりだけ一段しっかりしたものを選ぶ。この配分がいちばん無駄がありません。どこまで100均で足りるかは、下の関連記事でまとめています。
デメリット:防刃手袋が対応しているのは切り傷だけ
対処法:EN388は切り傷(切創)の規格で、先の尖ったものが刺さる穿刺や、飛んできた物が当たる衝撃には対応していません。チェーンソーやグラインダーのような高速で回る刃にも対応できません。足元にはしっかりした靴、頭にはヘルメットというように、守る場所ごとに道具を分けてください。ニット素材で防水ではないため、水を扱う場面では上から薄手のゴム手袋を重ねてください。サイズが合わないと指先が余って危ないので、親の手に合うサイズを選ぶこともあわせてお願いします。
費用を抑える方法はこちらにまとめています。
【関連記事】防災グッズは100均で足りる?揃うもの・足りないものリスト
よくある質問(6問)
まとめ
この記事のまとめ
- 実家の備えは「量」より、親が自分の手で届く場所にあるかで決まる
- 置き場所は寝室の枕元と玄関の2か所。しゃがまず背伸びせず届く高さに置く
- 土台の7つに加え、薬・眼鏡・補聴器の電池など「毎日使うもの」を足す
- 市販のセットは若い人向け。重さ・水の容器・食べ物・明かりは入れ替える
- 手袋は規格の表示とサイズの両方を見る。ぶかぶかは逆に危ない
- 防刃手袋は切り傷対策専用で、刺さるけがや防水には対応していない
- 一度に全部やらない。帰省のたびに1つずつ置いていくほうが続く
今週末に実家へ電話をするなら、「押入れに防災リュックある?」の一言から始めてみてください。そこから先は、帰省のたびに1つずつで十分間に合います。


